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あるもので整える

結婚してこどもをもつ前。それはそれはがむしゃらに、脇目もふらずはたらいていた。一種のワーカホリックであったと思う。そうしていないとかえってストレスがたまって不安に感じていた。いろいろな物に置き去りにされそうで、そうしていないと自分の価値がないような気がして。そうしていただいていたお給料は、当然のように自分のためだけに使える生活だったので、まあ、様々な、それこそ生活感のないきらびやかな雑誌に出てきそうな服やら時計やら雑貨やらを購入しては、ほんの少しだけ気持ちが気持ちが満されて、でもそうして我が家にやってきたものたちを十分にかわいがってあげないまま次から次だった気がする。でもでも、結婚して旦那様がとても丁寧にものを扱う人で、一緒に生活していて気持ちが良いな、と感じたり、こどもができて、いろいろな物が必要だけれど、あっという間におおきくなってしまって、高いお金を出して背伸びをして買ったPatagoniaの帽子とか、THE NORTH FACEのオーバーオールなんかがほんの数回しか出番がなかったりとか、育児休暇中につきつききそれまでなかった家政経済観念というものが私にも生まれてきた・・・などで、私の、『モノ』に対する価値観が相当ドラスティックに変化したと思う。

服ももちろんだけれど、キッチン用品も、収納用品も、お料理の材料も、いまあるもので工夫して、機能もセンスも味も豊かにすることができる。そうするためには頭の中を整理して、じっくり考えることが必要なのだけれど、この作業がまた楽しい。もったいない精神ばかりでは心もしぼんでしまうけど、自分の持ち物ににはしっかり愛情をもって生かしてあげることを考えると、自分の生活も整えられて非常に心地がよい。服も、もう40路にもなれば、そこそこの質のものがクローゼットにあるわけで、そこにトレンドの小物や色味をもってくると、ある程度はハイセンスに仕上がるし、いただきものが入っていたかわいい箱はこども用品が納められるし、お料理の本に「かぼちゃをマッシュする」と書いてあっても、甘味が必要なのだな、と想像できれば、いただいたさつまいもで代用できたりする。冷蔵庫の野菜の整理に、ペットボトルをカットしたものを使う、なんていうのは結婚前の私には考えられなかったことだ。

インテリアも然りで、ビジネスでのインテリアコーディネートは、夢をうる商売ということもあり、実生活とかけ離れた部分も必要だとは思うけれど、私生活は、極力ものを厳選して、『置く』『飾る』『しまう』・・・を丁寧にしていきたいものだ。余白をもたせながら、バランスにこだわり、もしくはわざと密に置いたり、シンメトリーにおいたり、いやここはアシンメトリーに視線を動かそうか・・・など、コーディネートのセオリーは知らなくとも自分流で熟考してインテリアを楽しむことは、心を豊かにしてくれると思う。

こんな楽しさに気づいて私の浪費癖はだいぶ無くなった。育児中だからデニムとスニーカーでほぼ事足りる現実、ということも大きいが。物欲を満たさなくても心は随分満たされている。

・・・まあ、女性は購買という行為自体を楽しいと思う生き物で、それはそれで、人生を豊かにするエッセンスには間違いないのだけれど・・・。





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